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   わたしの家はごく普通の四人家族。ずっとそう思ってきた。
   父はサラリーマンで、性格はとても呑気。母は専業主婦で、性格はとてもおっとりしている。そんな二人を見て育ったからか、自分がしっかりしなければという思いが物心ついた頃には芽生えていた。友達からは委員長タイプと言われることが多く、実際に学級委員をしている。と言っても、学級委員なんて全国のどこの学校どこのクラスにも一人はいるわけで、そう考えるとこれと言ってアピールできることではない。そんなわたしに対する両親の評価は、放っといても一人で生きられる子、といったところだと思う。
   子供は手がかかるほど可愛い。それはおそらく事実で、両親の愛情はわたしよりも三歳離れた妹の梨花(りんか)に注がれた。それが悔しいかと言うとそんなことはなくて、むしろわたしも梨花が可愛くて仕方がなかった。蝶よ花よと持て囃され、梨花は少し我が儘な性格に育った。「あれ買って」であったり「あれ食べたい」は当然として、変わり種としては「赤い目になりたい」だとか「サンタを掴まえて」といったものがあった。そんな我が儘に対して、食卓に出される料理のニンジンの比率が異様に多くなったり、父が破れた赤い布きれを手に「いやぁ、父さんも頑張ったんだけどまさかサンタがテコンドーを使えるとは思わなかった」なんて言ってしまうのだから、いかにうちの両親があまあまなのかわかって貰えると思う。
   そんな我が家のお姫様は、両親の言うことはなかなか聞かないのに、わたしの言うことだったらわりと素直に聞いてくれた。    それがわたしの一番の自慢だ。
   まあ、少し変わっているかな? と時折思うことはあるが、どれも常識の枠内から外れない程度の問題でいたって普通の四人家族。これといった問題もなく、のほほんと日本に居を構えて暮らしてきた。
   でも、あることをきっかけに、わたしはここ数日梨花に触れることができずにいる。
                   

                                                




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