迷路〜challenger〜


 
 
 廃墟と化した巨大ショッピングモール。
 ここに迷い込んでからどれだけの時間が経っただろう。どれだけの時間走り続けているのだろう。
 柿崎先輩のハンドサインで歩調を緩める。
 止まれ、それから警戒だ。
 曲がり角の手前の壁に柿崎先輩が張り付き。俺はそのサポートにつく。
 銃のグリップをきつく握りしめる。
 壁から飛び出した柿崎先輩に続き、俺もその背後から銃口を前方に向けた。
  通路に人影はない。左右の店をライトで照らし奴らが潜んでいないことを確認する。
 時代遅れの服が散乱し、隠れられそうな場所はない。まさかとは思い、試着室にもライトを向けるがその心配はなさそうだった。
「クリア」
 その声で肩の力が抜けた。
 後方を確認した後、改めて前方を見ると床一面に割れたガラスが散乱している事に気づいた。
 ため息が漏れる。
 柿崎先輩はなんの躊躇いもなく走り始め、じゃりじゃりと音を撒き散らす。
 俺が神経質すぎるのか? 違うだろ? 訓練の時と変わらない柿崎先輩の方がどうかしている。
 大きなガラスを踏み割らないよう気をつけながら歩き出すが、五歩目で足下から高い音が鳴った。
 今の音が奴らの元に届いたかもしれない。
 先ほど後方を警戒したばかりなのに、周囲に視線を走らせてしまう。
 届いたかもしれないし、届かなかったかもしれない。どちらにしろ私には関係のないことよ。キャハハハハハハハハ。
 無意味な笑みを向けるマネキンに対して口の中で呟く。黙れよ。                                              

                                                




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